三位一体節後第11日曜のカンタータ
今日は三位一体節後第11日曜なので、該当するカンタータはBWV199, 179, 113の三作品。
- BWV199 "Mein Herze schwimmt im Blut" 「わが心は血の海に漂う」
- 1713年8月27日初演。ヴァイマール時代*1に属するカンタータ初期作品。1911年になって発見されたもので、教会カンタータでは最後の199番が振られている。題名や歌詞内容は恐ろしげだが、実際には大変甘美なソプラノ独唱用のカンタータ。ルター派神秘主義・敬虔主義的な色合いが強い作品。なおこの作品はレチタティーヴォとアリアを交互に配置した「モダン」なカンタータのバッハ最初の作品と言われる。
- 本日は鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパン演奏、鈴木みどりソプラノ独唱で聴きました。鈴木みどりさんのソプラノはひたすら汚れなく、すっきりしたのが特徴です。私は同じくBCJの「マタイ受難曲」(BWV244)の野々下由香里さんのアリア「愛の御心から」が大好きなので、野々下さんのソプラノでも聴いてみたいですね。
- BWV179 "Siehe zu, daß deine Gottesfurcht nicht Heuchelei sei" 「心せよ、汝の敬神の偽りならざるかを」
- 1723年8月8日初演。ライプツィヒ時代のカンタータ第一年巻に属する。BWV199とはうってかわって、偽善と高慢に対する警告を主題とした歌詞内容であり、バッハの曲もそれに則して峻厳なもの。ライプツィヒでのトーマスカントル*2就任にあたってバッハは「芝居がかっていない音楽」を作るよう市当局から求められており、それに従ったものと考えられる。実際この時期のライプツィヒでは、ルター正統派と敬虔派との宗教的・政治的緊張が高まっていた。もっともバッハはBWV179の初演と同じ日に、敬虔主義的な前述BWV199の再演をおこなっており、両者のバランスをとっているかのようだ。
- 第1曲と第3曲はそれぞれBWV236「ミサ曲ト長調」の第1曲 "Kyrie" と第4曲 "Domine Deus" に、第5曲はBWV234「ミサ曲イ長調」の第4曲 "Qui tollis peccata mundi" に転用される。
- 本日はカール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ・オーケストラ演奏で聴きました。これはさすがに重々しい演奏です。
- BWV113 "Herr Jesu Christ, du höchster Gott" 「主イエス・キリスト、汝こよなき宝」
- 1724年8月20日初演。ライプツィヒ時代のカンタータ第二年巻に属するコラール・カンタータ。B.リングヴァルト作の同名コラールに基づいた作品。
- 本日はグスタフ・レオンハルト指揮、レオンハルト合奏団演奏、合唱はフィリップ・ヘレヴェッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレで聴きました。