フリッツ・ヴェルナーのカンタータ選集

つい最近まで知らなかったのだが、フリッツ・ヴェルナー(Fritz Werner, 1898-1977)はカール・リヒターと並び称されるバッハ演奏の第一人者であったそうだ。リヒターと違ってなかなか録音が入手しにくい状況だったのが、今回、バッハの教会カンタータ55曲に加えて、マタイ受難曲ヨハネ受難曲、クリスマス・オラトリオ、復活節オラトリオ、昇天節オラトリオ、ミサ曲ロ短調、モテット集がCD30枚にまとめられて発売されることになった。これだけあれば、あとメジャーな宗教曲は小ミサ曲とマニフィカトくらいだ。
今回はその第一弾としてカンタータ選集1(ASIN:B00028XCSM)が発売された。曲の並び順はリヒターの選集と同じく教会暦順で、待降節から洗礼者ヨハネの祝日までのカンタータ30曲が収録されている。演奏はハイルブロン・ハインリヒ・シュッツ合唱団、プフォルツハイム室内管弦楽団ハイルブロンヴュルテンベルク室内管弦楽団で、録音は1959年から1972年にかけてのステレオ録音。
収録作品は以下の通り。

  • CD1: BWV61, 40, 28, 65
  • CD2: BWV110, 57, 32
  • CD3: BWV82, 92, 23
  • CD4: BWV72, 1, 182
  • CD5: BWV249(復活節オラトリオ), 4
  • CD6: BWV31, 6, 104
  • CD7: BWV67, 85, 103, 87
  • CD8: BWV43, 11(昇天節オラトリオ), 34
  • CD9: BWV68, 39, 7
  • CD10: BWV76, 30

演奏は当然ながらやや古風で叙情的な落ち着いたもの。ここのところリヒターの演奏をよく聴いているので全然違和感なし。リヒターでも感じるのだが、古めの録音の重たい合唱は苦手なのだが、アリアやレチタティーヴォはOK。
ただしリヒターと同時期の録音でおそらく当時の有名曲が中心ということもあり、カンタータ55曲のうち約2/3はリヒターの選集と重なっている。またBWV51, 85, 104, 140については録音時期の異なるものが2ヴァージョン入っているほか、偽作とされて他のカンタータ集にはあまり入っていないBWV53, 160が収録されている。