ガーディナーのバッハ・カンタータ巡礼シリーズ

今日は三位一体節後第15日曜なので、該当するカンタータBWV 138, 99, 51の三作品。一年前の2004年9月19日には鈴木雅明、ジョシュア・リフキン、ジェフリー・トーマスの演奏を聴いたが、今回は今年発売されたジョン・エリオット・ガーディナーのバッハ・カンタータ巡礼シリーズのCDが手元にあるのでこれを聴いてみた。

ガーディナーの「バッハ・カンタータ巡礼」"Bach Cantata Pilgrimage" とは、2000年のバッハ・イヤー*1に合わせてガーディナーとイングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団が1999年のクリスマスから始めたとんでもないプロジェクト。世界各地の教会を訪れて、バッハの教会カンタータ全曲を該当する協会暦に毎週、しかも一年間で全部演奏・録音してしまうというとんでもないもの。

もちろんバッハ自身毎週平均一曲の新作カンタータ作曲というペースを数年間続けたり、録音という意味では同じくバッハ・イヤーに合わせてピーター・ヤン・リューシンク指揮、ネザーランド・バッハ・コレギウムが約1年半でカンタータ全曲録音というのもあるけれども、ガーディナーの場合毎週毎週別の都市の別の教会に移動しながらライブ録音をおこなっていったわけで、とても人間業と思えないというか、なんでそんなことをやろうと思ったのか。

今のところ2枚組のセット3巻が発売されており、内容は

  • 第1巻が2000年6月23日から26日にかけてロンドンでの録音で洗礼者ヨハネの祝日と三位一体節後第1日曜日のカンタータ
  • 第8巻の1枚目が2000年9月28日ドイツはブレーメンの録音で三位一体節後第15日曜のカンタータ、同じく2枚目が2000年7月10日スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラの録音で三位一体節後第16日曜のカンタータ
  • 第24巻の1枚目が2000年5月14日ドイツのアルテンブルク録音で復活節後第3日曜日、2枚目が2000年5月21日英国はワーウィックでの録音で復活節後第4日曜日のカンタータ

となっている。

このようにCDが教会暦順に録音されているため、今日のように教会暦に合わせてカンタータを聴きたい場合はけっこう便利*2。ちなみに第8巻の1枚目にはBWV 138, 99, 51の他に演奏された日付が不明のBWV 100も収録されている。

いったいこのような無謀とも言えるスケジュールでどのように練習時間を取ることができたのだろうか。演奏もきわめてまっとうなもので、やっつけ仕事的なところは少しもなく高水準といっていいだろう。さすがにソリストは固定せず毎回メンバーを変えているけれども、それはそれでいろいろな歌声が聴けて良いといえる。

なおこのとんでもないシリーズは当初はドイツ・グラモフォン/アルヒーフからCD発売される予定だったのが、同社が恐れをなして、結局ガーディナー自身が設立したNPO法人Monteverdi ProductionsのもとでSoli Deo Gloriaレーベルから発売されている。録音自体は全て完了しているので、とにかく資金の続くうちになんとか全部リリースしたいのだろう。Monteverdi Productionsのオンライン・ショップから今後リリースされる全CDを予約すれば、全世界どこでも送料ゼロで定価より25%安い15ポンド(2枚組)で各CDリリースの都度送付するとのこと。けっこういいかもしれない。

それからバッハのカンタータに限らず宗教音楽のCDと言えばだいたい宗教的な絵画を用いたジャケットが通例だが、このシリーズは有名な写真家Steve McCurrayの写真を使っていてなかなかかっこいい。装丁も一切プラスチックを使わない紙だけで好デザインだが、丁寧に扱わないと分解してしまうかもしれないのが難点。

でもBWV 51のソプラノはガーディナー盤のMalin Harteliusよりも、トーマス盤のジュリアンヌ・ベアドの方がいいな。

*1:1750没のバッハの死後250周年です。

*2:他のカンタータ全集では、リリングの全集とアーノンクールレオンハルトの全集がBWV順、鈴木雅明の全集とコープマンの全集が作曲年代順、リューシンクの全集が特に意味のないバラバラ(というか、演奏の簡単なものから録音していったらしい)となっている。