「ケルベロス第五の首」(ISBN:4336045666)メモその7

このペースじゃ一生終わらないなあ。

  • P.84 わたし自身の推測では――こんなに時間のたった今となって、どれほどの意味があるのかわからないが――喧嘩して私が刺したのだと信じていたのだろう。(中略)もちろん、それは失われた冬のあいだに何かわたしが言ったことのせいなのかもしれない。
    • この推測が誤りであることを暗示している。冬のあいだ記憶を喪失している異常な状態の間に何があったのか? 意味もなくこのような設定をおく必要はないだろう。
  • P.84 メアリードルはほっそりした金髪の優しい心をした少女で、わたしはとても好きになった。
    • メアリードルは(デイヴィッドと同じく)金髪。「とても好きになった」にしてはメアリードルの描写が少ない。
  • P.85 わたしは、彼の肩越しに、自分の肉体が見えず、見えるのはただ彼の腕とわたしの腕だけであり、わたしたちは闘奴であってもおかしくなかった。
    • P.77の腕が四本ある闘奴とは、つまり「第五号」と「父」の合一した姿。
  • P.85 覚えているのはある夜、メアリードルとフィードリアを家まで送っていったあと、寝る用意をしていたとき、その前にミスター・ミリオンと叔母と三人で、デイヴィッドのベッドのまわりに座ってその相談をしていたことだった。
    • この訳文では「第五号」とミスター・ミリオンと叔母の三人が「父」を殺す相談をしていたように読めるが、これは誤り。
    • 原文では "I only remember that one evening, as I prepared for bed after taking Marydol and Phaedria to their homes, I realized that earlier when the three of us, with Mr. Million and my aunt, had sat around David's bed, we had been talking of that."
    • 訳しなおすと「ただこれだけは覚えている。ある晩、メアリードルとフィードリアを家まで送っていったあと、寝る用意をしていたときに気がついた。その前、ミスター・ミリオンや叔母と一緒にデイヴィッドのベッドのそばで、わたしが彼女たちと三人で話しあっていたのは、実際にはそのことだったのだ」となる。つまり「父」を殺す相談を(無意識に)していた相手はメアリードルとフィードリア。
  • p.86 外科用メスはポケットに入っており、いつでも使える状態だった。
    • とは言っても、実際に「第五号」がメスを使ったのかどうかは定かでない。
  • PP.86-87 部屋には花が活けてあったが、そんなことはこれまで一度もなく、あるいはとっくにすべてを悟っていて、特別な日のために、花を贈らせたのではないかとも考えた。
    • 何かを悟っているにしても、自分が殺される日のために花を飾るのは不自然。何かを祝うためという方が自然ではないか? それは何か?
  • P.87 「わかっているのか、おまえは――」
    • "Don't you know who --" 「誰が」何なのか? 「おまえは自分が誰だかわかっているのか」か? 「父」はこの説明によって「第五号」の怒りが解消されると考えているようだが。
  • P.87 ネリッサがドアを開け、遊び女とマーシュ博士を導き入れた。わたしはマーシュ博士の姿に驚いた。もっと驚いたのは父の書斎に女の子が入ってきたことだった。
    • P.13のピンク色の服の女性は遊び女ではないことになるか。
  • P.88 スイッチを入れるような、あるいは古いガラスが割れるような音を。
    • スイッチはP.26など「父」との面談に使われる録音装置を、古いガラスはPP.80-81でデイヴィッドが割った鏡を連想させる。比喩的に言うと、録音装置とは自分自身のコピーを作成することであり、鏡を割るのは自分の写し身を殺すこと。